2013年6月16日日曜日

病気との闘い 5



手術を終えてから数日のち、社長は吉祥寺のかかりつけの一般病院へと移った。
大部屋ならそんなに金はかからないが、個室に入りたがっている。
腎不全になってから今まで数多くの入退院を繰り返して来たが、わがままでええかっこしの社長はいつも個室だった。
本来なら血縁者が身のまわりの世話を焼くが、それはいつもオレの役だ。洗濯や買い物、あとは社長の話し相手や愚痴の聞き役といったところか…
オレも仕事を終えてから夜に見舞いに行き、休日は午後ぐらいから行くようにしていたので、あまりゆっくり休む時間がなかった。
オレ自身、(ストレスが溜まる)という言葉がきらいだった。ストレスなんてあって当たり前だろうと思っていたから。でもさすがに心も体もしんどくて、良く口ゲンカをした。
病人相手に声を荒げて「オレはホントに嫌な奴だな」と何度も自己嫌悪に陥ったが、ケンカしてしょんぼりしている社長を見ていると「仲直りしなきゃ…」という気持ちになって謝った。
それは社長自身も同じ気持ちのようで、「オレも悪かった、ゴメンな」と言ってきた。
なんというか、ケンカで友情を暖めあうという感じで、かえって絆が深まっていくような状態だ。
ケンカをするとお互い本音でぶつかるので、逆に相手の気持ちがわかるのだ。

そんな事を何回か繰り返していた頃、またショッキングな事になってしまった。
ある日、昼間に現場で仕事をしていると携帯が鳴り、社長からの電話だった。
「左足も切らないとダメだと医者にいわれた、病院出て家に帰るから迎えに来てくれ」
そうオレに言った。
オレは力が抜けてしまった。

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